これは残業ですか!?
先日厚生労働省から『名ばかり管理職』に関する通達が出されました。
内容は多店舗展開する小売業、飲食店等の店舗における管理監督者の範囲の適正化についてというものです。
マックやコナカで問題になっているので、実態を踏まえた上で最近の裁判例などをも参考に、一定の基準を示すことになったという訳です。
管理監督者に当たらないケースとして、
(1)アルバイトなどの採用権限がない
(2)部下の人事考課に関与していない
(3)遅刻、早退などをすると不利益な取り扱いを受ける
(4)サービス残業時間を勘案した時給換算でアルバイトの賃金に満たない
などとなっていて、これらを踏まえて総合的に判断するということのようです。
私たちが最近受ける相談の中で悩ましいのが、これは残業になるのでしょうかという質問です。
この『名ばかり管理職』のことが話題になり、問い合わせや相談が増えました。
先日も
「急に従業員から残業代を請求されて困っている!!どうしよう」
と相談された件がありましたが、私からのアドバイスは
「全く支払う必要がありません。そもそも御社には残業代は発生しないんです」
と伝えました。
言われた経営者の方が目を白黒して
「なぜ??」と聞いてきたのですが、理由は簡単。
その会社は実は漁業会社だったからなんです。
○労働時間と休日の決まり
労働基準法では、労働時間について、原則として、使用者は労働者に休憩時間を除いて1日につき8時間、1週間について40時間を超えて労働させてはならないとしています(第32条)。
また毎週少なくとも1回の休日が必要です(第33条)。
これらを超えて労働する場合には原則は労使協定の締結と届出が必要で、会社の規模に関係なく全ての使用者に適用されます(第36条)。
一方これらの規定をあてはめなくても良い場合が第41条に定められています。
それは
●農業または畜産、養蚕、水産の事業に従事する者
●事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者(管理監督者)
●機密の事務を取り扱う者
●監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が政官庁の許可を受けた者
となっていますが、それぞれをもう少し詳しくお話します。
○農業や漁業に働く場合
これらの場合には、仕事の内容が季節や天候等の自然条件に左右されるため、法定労働時間及び週休制に馴染まないと考えられました。
決まった日や時間に働くことが、出来ないためなんですね。
○監督若しくは管理の地位にある者
一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意味であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものとされています。
書き出しにも記載しましたが、一般企業で考える管理職と、労働基準法の管理監督者とは違うものと考える必要があります。
○機密の事務を取り扱う者
秘書など業務が経営者や管理者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理に馴染まない者を言います。
○監視に従事する者
通常の労働者と比べて労働密度が薄く、一定部署で監視するのを業務とし、通常は緊張の少ないものが許可された場合に限ります。
道路工事現場や交通整理などの監視員は許可されません。
○断続的労働に従事する者
休憩時間は少ないが、手待ちの時間が多い者を言います。
例えば以下の場合を言います。
●修繕など通常は暇だけど事故の発生に備えて待機する場合
●社員寮の賄いのおばさんなど、作業時間と手待ち時間が半々程度の場合
タクシーの運転手や新聞配達員などは許可の対象とはされていません。
上記のように労働時間や休日に関する規定を除外される人の範囲は規定されていますが、皆さんはご存知でしたか?
結構色々とあるもんなんですね。
でも管理監督者の適用には一定のルールが有って、かなり厳しく制限されます。
特に名ばかり管理職の問題からさらに適用が厳格化されてきました。
今回通達が出された小売業や飲食業などでは、店舗規模が小さい場合であっても店長という名称で判断して管理者としている場合が殆どですが、通達に合わせて労働時間の有り方を再検討する必要があります。
以前の私の会社では主任クラスまで管理監督者の扱いをしていましたが、絶対に認められない対応だったと背筋が凍る想いです。
まずは仕事の中身の見直しから始めていって、短い時間で高い生産性を実現することから再検討していくことをお勧めします。
2008年9月16日