労働経済白書から見た危機感
こんにちは。社労士の荒木です。
先月の30日に厚生労働省より今年度の「労働経済分析のポイント」が公表されました。
いわゆる『労働経済白書』というものです。
今年の白書ですが、急激な経済の悪化に伴って雇用環境も急変している最中、
どのような分析がなされているかについて注目してみました。
今回のテーマは「賃金・物価・雇用の動向と勤労者生活」としています。
景気が悪化した最近の局面と今回とを比較して、その特徴を分析しています。
07年まで景気が拡大していた過程でも、所得や消費の伸びには拡大の効果が波及
していなかった前提がまずありました。
そこへ昨年の輸入物価の上昇があって実質賃金が低下。
その時点では今年は大幅な賃上げかと言われていたのですが、その後の経済収縮
で、非正規雇用を中心に解雇が急増。
経済的な弱者に物価の上昇が直撃するといった状況を生み出しています。
データを見て驚いたのですが、私が新卒のころ(約25年前)は、卒業して非正
規雇用に就く若年層の割合は1割に満たないくらいでした。
世間も本人も社会に出るというのは、正社員になるということという時代です。
ところが、最近では非正規雇用が若年層の3割を超えています。
私のころの4倍で、これはもう非正規雇用をイレギュラーとは言えません!!
95年を過ぎたあたりから特にその傾向は強まっており、派遣が広く認められてき
たころから、その割合は急増しています。
すべての年代で、非正規雇用の割合が急拡大していますが、特に派遣に関しては
このままで良いのだろうかということが頭をよぎります。
正規雇用に対しては残業の縮小や一時帰休などの雇用調整が行われており、雇用
を守ろうとする姿勢が見受けられると見ています。
非正規雇用の人たちにまずは経済環境の直撃がありますが、正規雇用者に対して
はむしろこれからが雇用調整の本番を迎えるという感じがします。
怖いのは、非正規雇用者が職を失いつつある中で、正規雇用者までもが今後同様
の状況に陥ったときの日本の行く末です。
百貨店の売り上げを見ていると、日本中が負のスパイラルに入ったとも思えます。
白書では雇用の安定確保と経済の底支えを訴え、そのために産業や雇用構造の高
度化と質の高い雇用を生み出すことを求めています。
明日をも知れぬ、食うや食わずの不安定な状況では、心も経済も豊かさとは程遠
い世の中になっていく危険性が高まります。
私自身、10年前には非常に不安定な時期があり、ブルーシートのテントを眺めな
がらも一歩間違えればあそこに行ってしまうぞと、危機を感じたものでした。
こんなときには、強いリーダーシップが必要です。
企業経営者がどんな会社を作ろうとしているか、その強い意志が会社を動かしま
す。
状況が悪いのはどこも一緒。
違いはそこに生きようとする時の強い意志だと思うのです。
明治維新を生き抜いた人たちも、封建社会からの大転換を必死で生き抜きました。
また世界恐慌においても、松下幸之助さんは「不況またよし」の言葉を残して、
世界的な大企業を作り上げました。
このままでいけば日本は、私たちの地域は、そして残された家族の行く末は、非
常に危うい方向に向かっているような気がします。
どこの政党を選ぶかではなく、私たち自身が、どう強く生きようとするか。
そこが大切だと感じてなりません。
なんだか白書分析のつもりが、変な方向になってしまいました。
でも明るく笑いがある世の中を、自分たちで作って行きたいですよね!!
2009年7月27日