取締役の責任と権限
新会社法が施行され(商法改正)、取締役は新規で会社設立する際は1名でも良いとなりました。
既存の会社の場合は、定款を変更することにより、取締役を1名とすることが可能です。
また、取締役の任期は新会社法施行前は、2年でしたが、施行後は10年まで延長可能です。
10年任期だと、家族経営的な会社の場合は、同じ人が取締役のままなので、登記の手間や費用は省けて、とても良いですが、期限を忘れてしまいそうですね(笑)
さて、本日の日本経済新聞の特集で、「取締役の法務」という特集記事が掲載されています。
その記事では、「取締役の責任と権限」という事で記事が掲載されています。
要約しますと、
まずは、従業員と取締役との大きな違いについて、
従業員は、雇用契約により労働力を提供する。
取締役は、会社と委任契約を結び、会社から経営を委託され、責任を負う。
記事では、この取締役の義務である、善管理注意義務について、記載されています。
委任契約を結んだ取締役は、民法と会社法により、依頼者である会社に対して「善管注意義務」を負う事になります。
この「善注意義務」は、どこまでか、がポイントになってきます。
取締役は、依頼者である会社に損害が発生した場合、取締役は個人的に損害賠償責任を負うことになります。
取締役が責任を負う主なケースとしては、法令や定款に違反する行為を行い、会社に損害を与えた場合。当然、背任や横領があった場合はもちろん、責任を負うことになります。
法令や定款に違反する行為を行なった場合は、論外ですが、どこまでが、善管注意違反かが問われるかが、ポイントだと思います。
過去に野村證券がTBSに行った損失補てんでの株主代表訴訟では、東京地検は、取締役会の決議をえた補てん行為について、「将来の利益確保のため、やむを得ない面もあった。」として、元取締役の善管注意義務違反について、否定しています。
しかし、善管注意義務については、一概に判断できるものではなく、社会の常識に照らし合わせての判断だといえるでしょう。
ちなみに、出資者(株主)は、有限責任です。
株主の責任は、その株式の引受価格を限度とする。という商法規定があるように、出資金額までで責任は完了です。
最悪の場合であっても、出資額がゼロになるまで。となります。(これも痛いですが。)
中小企業の場合であっても、株主と取締役、社長が別の方である場合、利益の追求も当然ですが、株主との良好な関係、意思疎通についても留意が必要ですね。
2006年7月13日