「利益」と「所得」の違い~よく聞かれる質問~
よく聞かれる質問に、
「これは経費になるの?」という質問があります。
この説明の前に、「経費」と「損金」の違いをご理解いただきたいと思います。
前提として、法人の申告書(税務署に提出する申告書)」について、説明します。
表紙が青色の冊子です。
(白い場合もありますが、青色申告、白色申告については、機会を改めて記載したいと思います。)
実は、申告書は3種類のもので1冊となっています。
種類の内訳としては、
(1)申告書(別表ともいいます。)
(2)決算報告書
(3)勘定科目内訳明細書 ←決算報告書の科目の内訳を記載するもの。
と順番どおりに並んでいると思います。
この(1)申告書と(2)決算申告書の違いについて、ご理解いただくと早いと思いますので記載します。
以下、なるべく読みやすく記載します。
まず、(2)の決算申告書について。
主なものが、貸借対照表と損益計算書です。皆さん、馴染み深いのではないでしょうか?
この決算申告書は、根拠となる法律は商法で、会社の財政状態と損益状況を第三者(株主や債権者など)に示す目的で作成されます。
この決算報告書により、算出されるのが、「利益」です。
次に、(1)の申告書について。
分かりにくい表が並んでいますね。
この申告書は、法人税法に基づいて、公平な課税を目的に、作成されます。
この申告書により、算出されるのが、「課税所得」です。
従って、「利益」と「所得」は違った金額になってきます。
ちなみに、経費の呼び方も(1)申告書と(2)決算報告書では、違います。
以下、商法、法人税法と書きます。
商法では「経費」、税法では「損金」と呼びます。
当然、内容も違います。
「経費」にはなるけれど「損金」にはならない。というのが多いのです。
例えば、役員賞与。
商法上では、「経費」になります。しかし、法人税法上では、「損金」にはなりません。
決算直前で、税金回避が容易にできてしまうからでしょうね。
しかし、実際にお金の支出(予定)があるのであれば、商法上では、「経費」には違いありません。
株主や債権者に、開示する目的に沿って考えれば、「経費」計上しなければなりません。
このように、商法では「経費」になるけれど、税法上、「損金」にならないものを「損金不算入」といいます。
交際費の10%は損金不算入というのはご存知だと思います。
(資本金額により異なりますが。)
ちなみに、寄附金について。
国や地方公共団体に対して支出した寄附金は、「経費」にもなり、「損金」にもなります。
結局は、国又は自治体の財源になるのに変わりないですから。
しかし、寄附の支払先が上記以外のものは、「経費」にはなりますが、「損金」になる部分に制限があります。(場合によっては、全額、損金になりません。)
このような場合、決算報告書上の「利益」は、その金額分、少額になりますが、課税「所得」は、損金不算入分だけ、高額になってしまいます。
その金額分、差が出てきます。
このように、「経費」になるが、「損金」にならないものが多いです。
おまけですが・・・
Q、借入金を返済した金額
「利益が出ているから、借入金を返済しようと思って・・・これって経費になるんでしょ?」
A、なりません。「経費」にも「損金」にもなりません。
借りたときは、収益にならないですから・・・。
2006年9月8日