最低賃金法にご注意!!
平成20年7月1日から最低賃金法が改正になります。
この法律は昭和34年に施行されたのが最初で、元々は労働基準法から分かれて作られたものです。
最近の年金問題に絡んで、生活保護法との関係などから改正の必要が生じたため今回の改正に結びついた経緯があります。
私もはじめはそれほど大きな問題はないものと感じておりました。
しかし、改正内容や実務上から感じる問題点から数回に渡ってこのコラムで取り上げることにします。
1回目の今日は、法律そのもので定めていることと、改正の内容について簡単に触れ、2回目には最低賃金の計算において気をつけるべき点を説明します。
最低賃金法とは?
まずはそもそも最低賃金法で定めていることですが、国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとされています。
仮に、最低賃金より低い賃金で労働者使用者双方の合意の上で、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合であっても、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。
最低賃金には、「地域別最低賃金」と「産業別最低賃金」及び「労働協約の拡張適用による地域的最低賃金」の3種類があります。
地域別最低賃金と注意点
地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、すべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金として各都道府県ごとに1つずつ、全部で47の最低賃金が定められています。
現在の地域別最低賃金の金額は、最も高いのが東京都の739円、低いのは秋田県、沖縄県の618円です(時給換算で)。
金額の決定について、地域によって多少のずれはありますが、だいたい毎年10月ごろに決定されます。
中央最低賃金審議会が地域ごとの引き上げ額の目安を提示し、それを受けて各都道府県で労使の代表などで構成される地方審議会で金額を決めます。
チョッと厄介だなと思うのは、改正によって生活保護との整合性をとるという部分です。
実際に埼玉県の例で言うと、生活保護費の金額は地域により5種類に分かれており時給換算での最高額はさいたま市、川口市の757円です。
ところが埼玉県の最低賃金は702円なので、この地域では生活保護のほうが最低賃金を上回るという現象が起きています。
実は一昨年10月時点では687円でした。
法律改正に伴って昨年大幅に引上げられたのですが、それでもまだ不足しているためにさらにここ数年で大幅に引き上げになることが予想されます。
民主党などは最低賃金全国一律1,000円などと言っており、今後経営に与えるインパクトが非常に大きくなると予想されます。
地域別の最低賃金に違反した場合には罰金が2万円以下から50万円以下へと大幅に厳しくなったのも見逃せません。
産業別最低賃金とは
また産業別最低賃金というのは、特定の産業については地域別最低賃金より金額水準の高い最低賃金を設定されており、各都道府県ごとに全部で249の最低賃金が定められています。
鉄鋼業や電子部品製造業を中心に定められており、各種商品販売業(スーパーなど)も対象としている都道府県が結構あります。
千葉県では調味料製造業が対照となっているのは醤油の製造が多いからでしょうし、北海道では乳製品製造業が、沖縄では糖類製造業や酒類製造業があるなどお国柄が見えてきたりもします。
産業別最低賃金は罰則の適用が今改正で無くなりましたが、今後は労働基準法の賃金全額払い違反として上限30万円が適用されます。
都道府県を越えて事業を展開している会社では、地域別最低賃金だけでなく、産業別最低賃金についても注意を払う必要がありますね。
最低賃金の対象とならない労働者とは?
最低賃金は基本的に全ての労働者を対象とするのですが、都道府県労働局長の許可を受けたときに限って下記については適用されません。
○精神または身体の障害により著しく労働能力の低い方
○試用期間中の者
○認定職業訓練(事業主等の行う職業訓練の申請を受けて、都道府県知事が認定を行った訓練)を受けている者
○所定労働時間が特に短い者、軽易な業務に従事する者、断続的労働に従事する者
上記の方を雇用している事業主は誰でも最低賃金を下回った賃金を支給できるのではありません。
労働基準監督署に最低賃金適用除外の許可を受ける必要があるので注意が必要です。
また、障害により著しく労働能力の低い者等に関する適用除外が廃止され、最低賃金の減額特例が新設されることになりましたのでこちらもお気をつけ下さい。
以上今回は最低賃金の仕組みについて、改正内容を交えてお伝えしました。
2008年6月16日