割増賃金の計算方法
社会保険労務士の荒木です。
もう10月も最終週、早いものですねぇ、来週は11月(霜月)ですか。
余りの月日の速さに目が回りそうな毎日を送っておりますが、皆さんはお元気でしょうか?
ところでこの11月は、我々の業界では一寸した緊張月間。
というのも「労働基準監督署の調査強化月間」だからです。
つまり監督署が定期的な調査を集中して実施する月になります。
調査においては、就業規則、賃金台帳、労働者名簿、賃金台帳などを見ながら、
労働の実態調査が行われるわけですが、特に長時間労働やサービス残業問題には
厳しい指導が待っているようです。
そこで今回は基礎的なことですが、割増賃金についてコラムを書いてみました。
割増賃金の計算方法
前にも残業問題について述べていますが、今日はちょっと突っ込んだ、
でも結構日常的に見落とされがちな例について考えます。
それは時間外労働や休日労働、深夜労働における時間や単価の設定に関する問題です。
時間外労働をさせる場合に、どの時間から対象となるかについて基本的な認識がなかなか認知されていないと感じます。
労働基準法では一日の労働時間は8時間までとされていますので、それを超えた場合には時間外労働として割増賃金を払うことになります。
所定労働時間が8時間とされている場合には、その8時間を超えた場合に時間外の対象となってわかりやすいのですが、それ以外の場合にはどうなるのでしょう?
例えば一日の所定労働時間が9時から17時までの7時間の会社が有るとします。
そこで10時間労働する日があったとしたら、割増賃金はどうすればいいのでしょうか?
この場合、17時から18時までの一時間は、残業ですが割増賃金を払う必要はありません。
通常の労働時間で計算した一時間あたりの賃金額を支給すればいいのです。
月額168,000で月間168時間勤務する場合には、時間単価が1000円ですので、この
場合には1000円を追加で支給します。
18時から20時までの2時間については時間単価に25%以上の割増率を掛けた
金額を時間外単価として手当を支給します。
割増賃金の支払い基礎となる時間については、あくまでも労働基準法で定められ
た一日あたりの労働時間を超えた場合に発生するという原則です。
どうでしょう?
ウチは所定労働時間は8時間だから問題ないよ、と言われる会社が多いとは思い
ますが、パートさんに関しては5時間労働だったりしていませんか?
割と日常的に発生している問題ですからご注意を。
同じように休日労働についても注意しなければいけません。
休日に従業員に働いてもらったときは、休日労働手当を支給しなくてはいけませ
んが、コレも結構思い込みで間違う例が多くあります。
週休二日有る場合においてそのどちらかが出勤となった場合に、休日労働手当を
支給していませんか?
土日が休みの場合で、土曜日にイベントを実施したので、勤務した時間当たりで
35%増しの賃金を支払っているなどです。
この場合には25%増しで済むことが多い場合や、時として割増が全く必要でない
ことも有るんですよ。
労働基準法では、休日については毎週1日または4週間を通じて4日を支給すること
とされています。
その休日を法定休日と呼んで休日労働の割増賃金の支給対象となります。
会社の法定休日を日曜日と就業規則で定めている場合には、土曜日の出勤につい
ては通常の時間外労働とされるので、25%増しで良いことになります。
また土曜日の休日分を同じ週の他の曜日と振替えている場合で、週の労働時間が
40時間を超えないときには、時間外割増賃金を支払う必要はありません。
さらに休日労働した日の労働時間を、時間外労働の時間の計算にも加えなくては
いけないかというと、その必要はありません。
また、これに加えて深夜労働が加わると、また話がややこしくなります。
午後10時から朝5時までの深夜労働については、管理職も含めて25%以上の割
増賃金を支払わなくてはいけません。
深夜勤務が所定労働時間である場合は25%の割増率だけで済みますが、時間外労
働が深夜の時間帯に行われると割増率が50%になります。
また休日労働が深夜に行われた場合には35%+25%で60%の割増率となってしま
うので、注意が必要になります。
まともに割増賃金を支払った場合には、会社業績に与える影響が非常に大きくな
ったり、仕事の質と賃金のアンバランスが目立つことになってしまいます。
だから納得のいく人事評価の仕組みを持って、時間管理をしっかり行うことが、
今後ますます重要になってくると思います。
2008年10月27日