自己都合?会社都合?

社会保険労務士の荒木です。

「体力が続かなくなったので退職をします。」

従業員からそのような申し出があった場合の退職の処理はどうなるのか。

今までなら普通の自己都合退職として扱っていました。

でも従業員からは、体力が続かなくなったことを理由に、無理無理

辞めさせられたとして、ハローワークの窓口で会社都合と主張する

例が結構あります。

自己都合と会社都合では、失業給付金をもらえる時期や

額に大きな差が有るので、離職者本人にとっては大きな問題です。

少しでも多く、少しでも早く貰いたいとするのが本音。

一方会社にとっても辞めていった従業員に対して、そのようなトラブル

には巻き込まれたくない気持ちがあります。

本当は自己都合と知りながら、無用なトラブルは避けたいために

会社都合としていた事業主もいます。

この4月から(正確には3月31日から)は自己都合退職であっても、

失業給付を受ける際に条件が変更になったのです。

『新しく出来た特定理由離職者とは』

従来倒産や解雇などで離職する人のことを「特定受給資格者」と呼んでいました。

今回の改正では「特定理由離職者」という枠組みが出来、内容は大きく2つに分

けられてます。

1つは、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことなどの理由により離

職した人で、本人が契約の更新を希望したが、契約更新がなされなかった人です。

2つ目は以下の理由による自己都合退職の場合です。

 1.体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退などによる離職。

 2.妊娠、出産、育児等により離職し、受給期間の延長を受けていたもの。

 3.親の死亡や疾病負傷、または扶養や看護等の家庭事情が急変した場合。

 4.配偶者や扶養すべき人との別居生活が困難な場合。

 5.結婚や育児、会社の移転などによって通勤不可能または困難な場合。

 6.恒常的にある早期退職制度による場合。

スペースの都合上で簡略して説明していますが、非常に細かく規定されました。

『特定理由離職者になるとどうなるか』

失業等給付を受ける際には、まず雇用保険の被保険者であった期間の長さが問わ

れます。

従来の離職者の場合、離職日以前の2年間に被保険者期間が通算して12ヶ月以上

必要です。

特定理由離職者になった場合には、離職日以前の1年間に被保険者期間が通算し

て6ヶ月以上あれば受給資格を満たすようになりました。

一昨年の改正で、雇用保険の被保険者に1年以上ならなければ失業等給付を受け

られなくなったのが、緩和されたのです。

1年以上になった理由としては、安易に就職と離職を繰り返して失業給付に頼る

人を排除することとされていましたが、今回の改正では特定の理由のある場合に

救済されることになったものです。

また、上記の1の理由による特定理由離職者の場合には、3年間の期間限定で、

失業等給付が受けられる日数が手厚くなりました。

具体的には、特定受給資格者と同じ条件での受給が可能になったのです。

例えば1年以上5年未満勤務した50歳の従業員がこのケースに該当する場合、

通常であれば90日のところ180日になったのです。

『トラブルを避けるために』

いつもお話しすることですが、離職時のトラブルを避ける最大のポイントは、

入社時の雇用契約の結び方にあります。

今回の改正で期間の定めをして雇用契約を結ぶ際、契約の更新の有無と、どの

ような場合に更新されるのかを明記しておくことが一層重要となりました。

新しい離職票においては契約内容について具体的な内容を必ず記載することに

なっております。

ハローワークでも特定受給資格者か、特定理由離職者か、通常の自己都合離職

者かを判断するには、雇用契約書がその判断材料となるからです。

以上のように、自己都合であっても受給できる要件が変わったり、契約更新の

あり方ひとつで受給内容が変わったりと、非常に細かくなりました。

私たち専門家が見ていても、判断に苦しむところが出て来るかもしれません。

それだけにトラブルが急増する可能性を秘めた改正といえます。

安易な処置をしてしまうと、助成金の受給に影響を及ぼす場合も出てきます。

今まで以上に慎重な対応をしてくださいね。

社会保険労務士 荒木秀

2009年4月15日

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