育児休業でのトラブル

社会保険労務士の荒木です。

3月の新聞報道で、「妊娠出産や育児休業取得を巡り、解雇や雇い止めなどの不利

益な扱いを受けたとする相談が、労働局に急増している。」とありました。

妊娠・出産等を理由に解雇などの扱いを受けたとした相談件数は、平成20年度の

2月までで1800件を越えており、3年前と比べて件数が倍増しています。

また育児休業については、取得する人数が増えてきていることも有るとは思われ

ますが、やはり相談件数が3年前から倍増しています。

昨今の経済環境の急変局面において、何らかの雇用調整をしている企業は非常に

多いのが実際ですが、していいことと、やってはいけないことがあります。

また雇用調整をやるときの順番もあるのですが、その件については別途とし、今

日は特に法律上で禁止されていることについて取り上げます。

男女雇用機会均等法や育児・介護休業法では

妊娠又は出産したこと、産前産後休業又は育児休業等の申し出を

したことや取得をしたことを理由として、「解雇その他不利益な扱いをすること』は、

法律で禁止されています。

『解雇その他不利益な扱い』で禁止されている典型例は下記になります。

1)解雇すること

2)期間を定めて雇用される者について、契約を更新しないこと。

3)あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、

  その回数を引き下げること。

4)退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約

  内容の変更を強要すること。

5)不利益な自宅待機を命じること

6)降格させること

7)減給し、又は賞与において不利益な算定を行うこと

8)昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと

9)不利益な配置の転換を行うこと

10)就業環境を害すること

11)派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該労働者に係る労働者派

  遣の役務の提供を拒むこと。

以上これらのことは厚労省が過去に出した指針に出ていることになりますが、あ

くまでもこれは例示ですので、個別には他のことも該当する場合があります。

具体的な事例では、育児休業後に復職を希望しても

「業績悪化で以前の勤務時間帯に仕事が無い」とか、「他の人を雇ってしまった」

などど、勤務条件の変更を求められるケースが目立つようです。

今の環境下では先の見通しが立たないとして、雇用の維持について汲々としてい

る会社が多いのが現実です。

復職させたくても、余りに突然な経済環境の悪化で以前の通りの勤務条件が難し

くなっている事例は多いと思われます。

本人からの申し出で、勤務条件の変更を行うことや離職をすることは、法律上何

ら問題はないのですが、雇う側の都合で一方的に変更することは問題となります。

こういった場合に重要なのは「一方的」ということであり、相互に理解を行う努

力をしないでいては、解決の根をこじらせることになってしまいます。

労働トラブルの多くは、相互の不理解、不信感が根底にあります。

経営者が良かれと思っていることも、世代の違いや生活観の違いで従業員には相

容れないことも多かろうと思います。

解雇は当然にして禁止されていることですが、労働条件の変更については、良く

良く話し合うことで双方が合意できることがあるのではないでしょうか。

業績が厳しいときであればあるほど、従業員と正面から向き合って、気持ちをひ

とつにして欲しいのです。

気持ちに余裕が無いときほど一方的になりがちです。

こんなときほど慎重に対処して頂きたいと願っております。

社会保険労務士 荒木秀

2009年4月27日

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