■業績把握と経営管理 ステップ2.

経営判断の材料となる『業績の横切り』について。

今日の第2ステップは、このコストパフォーマンス(利益の構造)
を理解するステップです。これを「横切り」と呼んでいます。

「タテ」と「ヨコ」で見える化し、経営の判断材料にするという方法です。

さて、経営活動とはコストパフォーマンス(費用対効果)です。
10のコストをかけて、10以上のリターンを獲得するのが経営です。
10のコストをかけて、9以下のリターンなら赤字です・・・。

■利益はどこからやってくるか!?

自分の会社の「利益の構造」を把握することは、経営判断の重要な材料です。
利益が出ていても、その利益が出た経緯を理解できているでしょうか?

・売上が上がって利益が出た。
・経費を効率よく縮小できたから利益が出た。

の2種類で、同じ利益が出たという結果でも、利益の経緯は大きくちがっています。

利益が出たから良かった!で終わってはいけません。

経営は続きます。

利益が出た理由や構造を把握しておく必要があります。

そして、利益が出る状態を継続させることが大切です。

現在の利益の経緯や構造を理解するためには、
「必ず達成しなければならない売上高」を算出する構造を把握するのが近道です。

この必ず達成しなければならない売上高を【損益分岐点売上高】といいます。

■損益分岐点売上高を把握するために

損益分岐点売上高を把握するには、経費に注目です。

経費を
〇変動費=売上が増加するごとに増える経費
〇固定費=売上に関係なく毎月かかる固定的な経費
に分ける必要があります。

固定費は「毎月」「同じ金額」かかってくるものです。
だから、その固定費分は「稼ぎ」から賄わなければ赤字です。

この「稼ぎ」とは、売上のことではありません!
売上の増加とともに増える経費(変動費)を差し引いた部分が「稼ぎ」です。
この稼ぎの部分を「粗利益」といいます。

「稼ぎ」=「粗利益」

ということは、毎月かかる固定費を賄うために、
固定費以上の「粗利益」を稼がなければならないという事になります。

業績は、つぎの計算で表現されます。

(1)売上
(2)変動費 (仕入、外注費、残業代など売上が増加するに従って増える費用)
(3) (1)-(2)=粗利益
(4)固定費 (家賃や電気代など、売上が0でもかかる費用)

(5) (3)-(4)=利益

大切なので繰り返しますが、毎月かかる固定費(4)を賄うために、
固定費以上の「粗利益」(3)を稼がなければなりません。

この稼がなくてはならない粗利益(粗利益率)から、
損益分岐点売上高が算出できます。

計算式はカンタンで、固定費÷粗利益率です。
※粗利益率とは、「変動費÷売上高」です。
 
売上高が100で変動費が30なら、粗利益は100―30=70
粗利益率は、70÷100=0.7(70%)になります。

以下にカンタンな例を記載します。

売上高  100

変動費 △30

ーーーーーーーーーーーーーーーー

(粗利益 70 粗利益率70%)

固定費 70

固定費 △70

ーーーーーーーーーーーーーーー

利益  0

損益分岐点売上高の計算(固定費÷粗利益率)
70÷70%(0.7)=100
 

となります。

この自社の
〇売上高に対しての粗利益(稼ぎである粗利益)の割合
(売上に対しての変動費の割合)

〇売上高に対する固定費の割合が
(粗利益額に対する固定費の割合)

を把握できているかどうかで経営判断は全く違ってくるので、とても大事です。

■損益分岐点売上高を把握して出来ること

経費を変動にと固定費に分けると・・・
〇粗利益率(いくら売上たらいくら稼げるか)が把握できる。
〇固定費(粗利益で賄うべき経費)を理解できる。

ようになります。

これができたら、
○粗利益率が低いから固定費を下げる必要があるな。
○粗利益率が高いからもっとコスト(固定費)をかけても大丈夫だ。
〇粗利益が固定費よりかなり高いから、新事業へチャレンジできる。
などの判断ができるようになります。

さらに、この損益分岐点売上高を【より具体的】にしてみましょう。

(例)損益分岐点売上高が100万円 客単価が5千円

 100万円÷5千円=200人が【損益分岐点来客数】となります。

「売上100万円を達成するには!?」よりも
「来客200人を達成するためには!?」の方が、
より具体的な「経営判断」に繋がると思いませんか!?

また、現場で働くスタッフの目標としても
「200人来店目標!」の方が、より具体的に動きやすいですよね。

さらに、曜日ごとの来店数の増減を考慮して、
「平日の目標来客数は○○人! 週末の目標来客数は○○人!」
と、毎日の目標を具体的に示すこともできます!

前回の縦切りした部門ごとに業績を把握し、
この部門ごとの「利益の構造」を把握できると、
経営判断がスムーズにできるようになります。

部門ごとに、
○この部門は固定費がかかりすぎだから、撤退が必要か?
○この部門は固定費が低いから、新しい市場での売上増加方法を検討できるな。

などの判断ができるようになるのです。

■資金繰りも考慮しましょう!

ここまでの「損益分岐点売上高」は、売上と経費だけでの計算でした。

しかし、「借入金の返済」や「未払金の支払」も
考慮して算出する必要があります。

借入金の返済や未払金の支払いは、経費ではないけれどお金は出て行きます。

利益が出て安心と思いきや・・・
「利益が出ているのに、なぜお金がないの???」
という状況になる事があります。

その理由は、一般的な損益分岐点売上高では、
「借入金の返済」や「未払金の支払」は考慮されてないからです。

しかし「借入金返済」や「未払金支払」をするとお金は出て行きます。
なので、「借入金返済」や「税金負担」も考慮して目標売上高を設定しましょう。

私はこれを【リアル損益分岐点売上高】と呼んでいます。
(具体的にはカンタンで、固定費に「借入金返済」や「未払金支払」を含めて、
計算するだけです)

■さあ!利益の構造を把握しよう!!

リアル損益分岐点を把握できたら、
目標達成のための具体的な行動に結びつけるだけです。

決算書を持ってきて、経費を変動費と固定費に分けてみましょう。
そして、【リアル損益分岐点売上高】を計算してみていただきたいと思います。

2023年8月22日

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