消費税の仕組み2 小規模事業者が選択できる計算方法
消費税の納税額は、税の累積を排除するために売上げに係る消費税額から仕入れに係る消費税額を控除した残額になるといったお話でした。
今回は一定規模以下の中小事業者のみが選択できる計算方法、簡易課税制度についてお話したいと思います。
簡易課税制度は、税額計算や納税のための事務処理の負担増を軽減する趣旨のもと、2年前(基準期間といいます。)の売上高(消費税がかかる売上高。課税売上高といいます。)が5,000万円以下の中小事業者に限り認められている制度です。
簡易課税制度の計算は、仕入れに係る消費税額を実際に支払った金額ではなく、売上げに係る消費税額に※みなし仕入率を乗じた金額を用いる方法です。
また実際に簡易課税制度の適用を受けるには、その適用事業年度前に税務署へ簡易課税制度選択届出書を提出する必要があります。
※みなし仕入率とは、売上げに係る消費税額から控除できる割合で、事業区分ごとに下記のように決まっています。
第一種事業・・・卸売業 みなし仕入率90%
第二種事業・・・小売業 みなし仕入率80%
第三種事業・・・建設業、製造業等 みなし仕入率70%
第四種事業・・・飲食店業、金融業等 みなし仕入率60%
第五種事業・・・サービス業、不動産業等 みなし仕入率50%
では具体的な数字で計算してみましょう。
例えば、1,050,000円(消費税50,000円)の売上げがあると仮定します。
この売上げが第一種事業に該当する場合は、50,000円×90%=45,000円が控除できることになりますので、納付額は「50,000円-45,000円=5,000円」となります。つまり、10%分が納付額となるのです。
これが第三種事業に該当した場合では、50,000円×70%=35,000円が控除できる金額となりますので、納付額は残り30%分の15,000円となります。
※実際には簡易課税制度の中でのより細かい計算方法により、若干金額が変わる場合もあります。
このように簡易課税制度を適用した場合には、実際に支払った仕入れに係る消費税額を計算する必要がありません。
ひとつひとつの売上げに係る消費税を事業区分ごとに振り分けて、それぞれのみなし仕入率を乗じて控除できる金額を求めていくことになります。
つまり、簡易課税制度を選択できる事業者は実額を用いた原則計算と簡易課税制度を選択
した場合で納付税額に差が出てくることになります。
業種・業態によっては、簡易で計算した方が明らかに納付税額が少なくて済む場合もありますので有利な方を選択していきたいところです。
ただし、簡易課税制度を選択する上で注意点もあります。まずは簡易課税制度届出書の提出時期です。
この届出書は税務署へ提出した会計期間の翌会計期間から効力が発生します。
つまり今期に簡易課税を適用するには、前期までに届出書を提出している必要があります。
また簡易課税制度は一旦適用されると2年間は原則計算に戻ることができません。
よって、特に多額の設備投資や建物等を購入する予定がある事業者は注意が必要です。簡易課税で計算した場合には実際に支払った消費税を控除することができないのです。
簡易課税制度のメリット・デメリットを説明してきましたが、2年前の課税売上が5,000万円以下になる事業者の方で、まだ原則・簡易のどちらが有利になるのかを比較検討されていない方は是非一度ご相談下さい。
(文責:木戸一貴)
2006年12月13日